二度目の恋の、始め方
…………な、に。
屋上から戻る途中の薄暗い階段を急ぎ足で降りていると、突然聞こえてくる怒鳴り声に足が止まる。丁度階段の踊場で数人の女子が1人の女の子を囲うように集まっていて。穏やかな雰囲気でないのは分かる。
「葉山君の片割れだからって調子に乗らないでよ。宮路君だって迷惑してるの分からないの?」
「だから……、関係ない、って言ってる」
「宮路君優しいから、自殺未遂した葉山さんを放っておけなかっただけよ。
またされたら困るし、学校側だって揉み消すのに相当お金使ったらしいじゃん」
ウェーブのかかった黒髪にぷっくりした桜色の唇に雪のような白い肌。大きな瞳を潤ませて、女の子達から責め立てられている小柄な少女は間違いなく美月ちゃんだった。
自殺、未遂って、なに……。
「違う!雄大は美月のこと守ってくれるもん!今まで誰一人、美月のそばに居てくれる人なんて居なかったのにっ、」
「だからそれがお情けだって言ってんの。葉山君だって面倒事に巻き込まれたくないから距離置いてんじゃないの?」
「……壱樹は違う。そんな理由じゃない」
「マジで生意気、……っ、誰!?」
とても弱々しい声でそう呟いた美月ちゃんを庇うように、気付いたら私は彼女達の前に両腕を広げて立ち塞がっていた。