二度目の恋の、始め方

お母さんのお仏壇に手を合わせるのは毎日の日課。写真の中のお母さんは近所でも美人だと評判の人だった。
鳶職の親方だった父と結婚して、まさに美女と野獣がくっついてしまった現状に皆は驚きの悲鳴を上げたらしい。

それでもお母さんは、駄目人間のお父さんを心底愛してたように思う。
毎晩のように飲んだくれて帰ってくるのをお母さんは必ず起きて待ってたし、借金紛いな事をしても絶対見捨てたりしなかった。


「あんな人と早く別れれば良いのに」

「ふふ、凛は正直者だね。
……でもね、お父さん……私が居ないと生きていけないような気がして」

「……お母さんも大抵変わってる」

「そうかもね」

案の定、お母さんが亡くなった後のお父さんの荒れようはハンパなかった。





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