恥ずかしい二人
今、自分が置かれている状況がちょっとうまく飲み込めなくて、ほとんど現実逃避の勢いで無理やりそんなどうでもいい事を考えていたけれど、木ノ内君に呼び掛けられ、容赦なく目の前の現実を突き付けられた。


ち、ちょっと待ってよ。


もう少し、時間的猶予をくれても良いじゃないの。


「何か、言えよ……」


いつも明朗快活な木ノ内君にしては珍しく歯切れが悪い口調で、しかも若干声が震えていた。


いや、『何か』と言われましても……。


「あ、そうだ」


私はせっかくだからこの機会に、昔から抱いていた大いなる疑問を彼にぶつけてみる事にした。


「何で名前に「まさ」とか「ひさ」とか付く人って、あだ名が「ちゃ」になるんだろうね?」


「は!?」


「いや、ほら、私って「まさみ」じゃん?だから親戚とか、小さい時からの友達の中には「まちゃ」とか「まちゃみ」って呼ぶ人が結構いるんだけど、そもそもなんで「ちゃ」なのかな、と思ってさぁ」


「知らねーよそんなの!」


木ノ内君はぶっきらぼうに言葉を吐き出しながら、体を起こし、ソファーから滑り降りた。


正確には、ソファーに横たわる、私の体の上から。
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