バレンタイン*少しの勇気をください。
ばっと見やると、ぼやぁ〜とした男の人の顔がある。
あたし、目がすこぶる悪いから度が強いメガネじゃないとよく見えないの。
「…あっ、ありがとうございます」
転んだところを見られたと思うと恥ずかしくて、誤魔化すように笑うとその人が息を呑んだ気がした。
「百合!
ほら、手!!」
いつの間にか側に来ていたユキちゃんがあたしの手を引っ張って立たせてくれた。
あ、前にいる人も手貸そうとしてくれてたんだけどな…。
なんか、ちょっと悪いことした気分。
パンパンとスカートについた埃を払って、あたしの散らばっていた教科書を集め、あたしに持たせてくれたユキちゃん。