バレンタイン*少しの勇気をください。
ありがとう。と笑うとユキちゃんは、当然のことをしたまでよ。とフンとそっぽを向いてしまった。
「ところでメガネは?」
「あっ、そうだそうだ。
メガネがないんだった」
どこだっけな。と呟くと、
「はい」
という声と共に、メガネを乗せた手がズイと出してきた。
「あ。あたしのメガネ」
それを受け取ると、ユキちゃんがもう話は終わったとばかりにあたしの手を引っ張る。
「あっ、キミ名前は!」
声の方を向くと多分メガネを拾ってくれただろう彼が豆粒くらいの大きさで叫んでいた。
それにあたしは
「秘密です!」
と、大声で返事をした。
それが高校一年生の時の体験だった。