Talent of quins
藍や瑠璃が熱心に訓練をしていた頃、蓮はある少年を睨み付け壁まで追い詰めていた。
その少年はびくびくとして怯えていた。
「あ、あの…お願いですから訓練を受けてくれませんか…?」
「ここには来たけど、それは知りたい事があるからよ。訓練を受けるとは言ってないわ」
「そんなあ…」
少年は酷く落ち込む。
その少年は蓮と歳も変わらない位で、焦げ茶色の髪で眼鏡を掛けた大人しそうな少年だ。
「答えて、ここから出る方法を」
「そ、それは出来ませんよ!それに君の能力はとても大きいから訓練しないと駄目なんです」
少年は必死にそう言うが、蓮はチッと舌打ちをする。
「ここに居るって事はあんたも魔法使いなんでしょ?」
「はい、まあ…君ほど凄い能力では無いですが」
「魔法使いとか魔法の存在は認める、信じるしかないし…けど!あたしは魔法使いなんか大嫌い!絵本の世界とは違うじゃない…夢の様な力じゃ無い…人を傷付ける奴らがいるなんて」
蓮は怒り、悔しさ、悲しみ…様々な感情が混じって思わず目に涙が浮かぶ。
「わっ…泣かないでくださいっ。確かにそう言う悪い人達も居ます。ですが…この学園には優しい魔法使いがたくさん居ます!」
「泣いてないわよっ……とにかくあたしは訓練なんて受けないから!」
蓮はそう言うと走ってドアを開け、部屋を出て行った。
蓮が部屋を出た所に、休憩中の瑠璃と皇が廊下を歩いていた。
「瑠璃っ!早くこんな所から出ようよ!」
蓮は瑠璃に詰め寄る。
「待て、お前が能力を制御する訓練をしないと…瑠璃を危険な目に遭わすことになる」
皇が蓮と瑠璃の間に入る。
「あなたは誰?あたし瑠璃を傷付けたりしないわ!」
蓮は訳が分からない様子で皇を軽く睨む。
「蓮…後で話そう」
瑠璃は優しく蓮にそう言う。
「うん…分かった」
蓮はしぶしぶ頷く。