Talent of quins
「君を迎えに来たんだ…あいつはもう居ないよ」
男は再び女性を見て言う。
「だからこれからは、僕が君の傍に居てあげる」
男の一言一言には冷たさを帯びていた。
「どういうことなの…?あの人に何をしたの?」
「何をしたって?そんなの分かってるくせに…僕がずっと望んでいた事だよ」
男は口角を上げ、にっこりと笑った。
「殺したんだ、あいつをね」
その瞬間、女性は唇を噛み締め首を振った。
「あの人が…っあなたに!」
「可笑しかったよ。自分の子どもを守る為に、自分を犠牲にする親なんて」
「それが当たり前よ!」
女性のその言葉に、男は「へえ…」と呟く。
そして玄関口に目を向け、掌をそちらへ向けた。
「この子…あいつに似てるね」
その瞬間……
辺りは真っ白な光に包まれた。
どこか遠く…否、近くでサイレンの音が雨の音に混じり聞こえる。
その日、五人の少年少女は大切な家族を失った。
まだ幼い五人には辛く、とても酷な別れであった…。