さかさまさか
『三組お別れ会と同じ所だったんだ。』
『三組の奴出て来た。』
三組と一組が入り混じって、元気でね。
写真撮影会やらが始まった。
そのざわめきを利用して、ケンジが春田に近づいた。
『らっ、山田待ってたよ。あんたを土手で、涙溜めて。』
『知らないし。』
『最後ぐらい、優しい言葉かけてやってくれないかな。』
『お前、あいつが好きなの?』
『ぼくじゃダメだから。ラーちゃんさ、いろんな物溜め込んで我慢して、少し荷物降ろしてやってくれないかな。』
『お前がやればいいだろ』
『ぼくじゃダメだから。君との雨の日が一番幸せだったって』


春田は、走って帰った。



21時頃、チャイムが鳴る。
はいっと母が出て、嬉しそうに話している。
『さくら。亮ちゃんよ。』
『えっ!』
『おばさん、ちょっと借ります。』
『はぁー。』
『ちょっと、話そうか?』
着替えなさいよ。と母がはしゃぐ。
『団地公園で待ってる。』
『うん。』


団地の公園に行くと、ブランコに座ったあいつがいた。
『待った。』
『大丈夫』
『いいの?』
『抜けて来た。』
『春田君、今までありがとね。』
『亮太でいいよ。』
『あっ。うん。』
『なんか、ごめんな。』
『あっ。大丈夫だから。』
『あいついい奴だな。』
『ケンジ。うん。』
『幸せにしてもらえよ。』
『そんなんじゃないし、年上の恋人もいるんだよ』
『そっか。だから慣れてんだな。』
『まぁね。』
『大学いいの?お前頭いいし。』
『いいよ』

会話が、続かなかった。
『あのさ、あんたが一人前になったら、髪切ってくれないかな。』
『おぅ!ばっちり可愛くしてやるよ。』
『約束』
小指と小指を絡まして、笑った。
『良かった。』
『私も。』
私は、また泣いた。
あいつは、私の髪をクシャクシャにした。

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