お前が愛しすぎて困る
目を覚ましても、
江梨子はうつぶせのまま動こうとしない。
「…身体、大丈夫か?」
「…うん。」
江梨子はベッドにもたれて座る俺を
じっと見つめた。
動こうとしない俺に手を伸ばすと、
身体を持ち上げ、
ゆっくり顔を近づけてくる。
江梨子が何をしようとしてるのか分かっていた。
でも、
「…シャワー先使えば?」
と、
唇が重なる前にそれを制した。
江梨子は近づくのを止め、
視線を落とすと
「うん。」
と小さくつぶやいて
バスルームに入っていった。
再び煙草に火を点ける。
俺は終わったあとの、
この空気というか空間が嫌いだ。
江梨子のシャワーを待つ間も
テレビを点けて、
何本も煙草を吸った。
ふと、
テーブルに置きっ放しにしていた
レモンティのペットボトルが目に入った。
ぬるくなって不味いのは分かっていた。
でも昨日、
花南が美味しそうに飲んでいた、
その姿を思い出して、一口飲んだ。
やっぱり不味い。
けど、
なぜだか少し落ち着いた気がした。