クールな先輩の心を奪う方法
…何の整理も出来ないまま、定時を迎えた。
オレは帰り支度をすると、少し遅れて美雨が自分のデスクに戻ってきた。

「すみません、急な仕事が入って遅れました」
「…大丈夫だよ。まだ、定時から、五分しかたってないし。それより、もう終わり?」

「…はい、なんとか」
「…じゃあ行こうか」

そう言って、先に歩き出す。
美雨は、足の速いオレについてくるのに必死。
少しして、それに気づいたオレは、ピタッと足を止めた。

「ゴメン、つい、何時もの癖で、早く歩いた…息上がってるな」
「だ、大丈夫、です。でも、もう少し、ゆっくり歩いてくれると助かります」

「あぁ、そうするよ。俺たち足の長さが違うんだから、歩幅も違うよな」
オレの言葉にムッとした顔をした美雨。

「私の足が短いって言いたいんですか?」
「…さぁな」
そう言ってニヤリと笑う。
すると、美雨は、頬を膨らませ怒った。

…その顔ですら、可愛いと思うオレは、重病だなと、思った。
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