Treasure
だけど、今返事をしなくていいという現実に、内心ホッとしている。
矛盾してるよね。

呆然と立ち尽くすあたしに、声をかける人物。


「百合ちゃん? 
見てましたよ~? 
あの小城に告られるとか、相当モテモテみたいやな★」


その少女は、にやにや笑っている。
はぁ…と溜め息をつけながら、受け答えをする。


「綾女……見とったん?」


あたしに喋りかけた女子は、白浜綾女。
目が大きくってセミロング。
本人には言わないけど、あたしは綾女と最高の親友だと思っている。

当の本人は、どう思ってるか知らないけどね。


「最初っから最後まで、全部見てました♪」

「ほんっま悪シュミやな。
ありえへん」

「ええやんええやん♪」


悪気を全然持っていない様子だ。
もちろん、あたしも別に気にしないけど。


「あたしら、親友やろ?」


…ったく!
こういうときだけ使うやろ?

”親友”

まぁええけどな★


「はいはい、待たせてごめんな? 
帰ろかぁ」





綾女は笑って答える。


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