WHY
~かえり…~
最初の時は何もなかったけど、一番思い出しても、思い出したくない事かもしれない。今でも一場面一場面はっきりと覚えている。まるで、アニメーションのセル画みたいに。そんな状況のなかでも、何でか分からない、恐怖感が今後も付きまとうのかと思ったらやりきれなさが静々と心に響いてきて…。
 その日の夜は寝れなかったし、誰にもしゃべれなかった。今でもその時の出来事は、一人しか話してない。家族には話せなかった。信じてもらえないと思ったから。ましてや、他の教師、家族はは”あいつ”の事を崇拝していたし、安易に言ったら、”あいつ”に何を言われるか分からない。自己犠牲を繰り返していた。それしか、できなかった。
 今でも後悔はしていないし、全然話さなくてよかったと思う。皆に余計な心配を与えなくていいし、悲しませなくていいし。勿論家族にも。私の存在を悲しませない様にしたかっただけだから。

 でも…そんな私を一人として分かってくれる人は居ない孤独感はその時は感じ様とはしなかった。感じても、感じなくてもどっちでもよかった、それが唯一の救いだったかも。
 
 次の日突如として、授業中に呼ばれた。”あいつ”からだ。授業中に生徒を名指しで呼べるのは、”あいつ”くらいだった。なぜだか知らない、ここで私は?とも思わず、言われるがままにした。単に暴力が怖いからだ。抵抗すると女だろうが、子供だろうが手を出す。実際に、2年前に離婚はしており、子供も二人居る。そんな話を誇らしげにいう、”あいつ”が嫌いだ。
 廊下にでて、右手に降りると、直ぐ下は中庭にあるプールへと続く。中2階のピロティにプールがあるのだ。そこにあいつはいた。手招きをして、用具室の中に入れさせようとした。そこには、ビート板やら、仕切りロープやらで散乱していたが、なぜか中央にぽっかりと空間があった。無造作に”あいつ”は近くにあった、バスタオルを広げ、ここに寝ろいわんばかりだ。全身が氷つき、足が一歩も前に出せれなかった。この時までは、何もされてないが、一度「体」の体験を持つとそれ以上ずるずる行く事くらい容易に想像できる。だから、固まった私は私なりの必死の抵抗だったのかもしれない。

 そんな、私を見て、ここでは終わらない。それが”あいつ”だ。

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