まっしろな遺書
 2015年6月30日


 朝、小太郎が十三の部屋にやって来た。
 1人の男を連れて……

「十三、この間俺に頼んだことを御幸に頼んだんだ」

「この間?」

 十三の頭の中が真っ白だった。

「美穂さんのことだ……」

 小太郎が、言う。
 それを聞いて十三は思い出す。

「で、そちらの方は?」

 十三は、その男の人の方を見る。

「僕の名前は、西郷 御幸(さいごう みゆき)。
 弁護士をやっているよ」

「弁護士ですか?」

「ああ」

 御幸さんが、ニッコリと微笑み十三に手をさし出す。
 十三は、ゆっくりと体を起こし御幸さんの手を握り締める。

「で、杉並 美穂さんに関してですが……」

「あ、はい……」

「6月1日に自殺している……」

「あ、はい……
 でも、助かったんですよね?」

「いや……
 それが……」

 十三は、ここで認めたくない現実を知ることになる。
 美穂は、既に亡くなっていた。

「じゃ、今いる美穂は……?」

「それは、君が直接確認するんだ……」

「え?
 僕の口から言わな方がいいだろう」

「ただ言えることは、1つ。
 もう君の知る杉並 美穂と言う存在はこの世にはいない」

  じゃ、あの美穂は誰なんだ?
  どうして美穂のふりをしてるんだ?

 十三には、わからないことばかり……


 充に歩の死……
 そして、美穂の死まで知らされた。
 十三の中は、頭が、真っ白になった。

「ただ信じてやってほしい。
 その子に悪意はないと……」

 小太郎が、俺の目をじっと見て言う。

「ああ、わかった。
 ありがとうございます」

  悪意が無いのはわかる。
  だから、こそ知りたい。
  あの子が、何を理由にそんなことをしているのか……
  もう少しだけ付き合おうかと思う。
  あの美穂のことを信じて……

 十三は深くそう思うと心にそう誓った。
< 156 / 186 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop