本気の恋をしようじゃないか《加筆修正版》

「何？それ……」
「ごまかさないで私見たんだから。上半身下着姿の城田さんが小牧君の膝の上にまたがって、キスしてたじゃない」
一番思いだしたくない事だけど言わなくちゃいけないと思った。
「してない！」
小牧君は私の目をじっと見つめた。
「うそ！だって私はこも目でーー」
「あれは城田が勝手に脱ぎだして……確かにキスはした。と言うか唇がちょっと触れただけ。
いきなりですぐに突き放した。でもそれ……見たの？」
私は黙って頷いた。
「信じて！本当に何もなかったんだ！って不意打ちでもキスしちゃったのは変わりないんだよな。ごめん。本当にごめん」
浅野さんの言ってた言葉の意味がわかった様な気がした。

私たち、言葉足らずの勘違いをしてたって事？
私たちは顔を見合せたまま何も言えなくなった。
10年間私はずっと小牧くんのことを勝手な思い込みで憎んでいたってことになる。
そのあまりの長い勘違いに全身の力が抜けるように項垂れた。
小牧君がフッと笑うと顔に手を当てた。
「ただの勘違いに何年かかってんだよ。ほんと俺ってどんだけバカなんだよ。
　しかも杏奈の事ずっと忘れられなくて10年もぐじぐじしてたんだもんな・・・ったく」

え？
驚く私に小牧君はあの優しい眼差しで微笑んだ。
「杏奈との再会は運命だって思った。正直焦ったよ。だって名前をわざと変えるし、お酒めちゃ強いし」
「だ、だって小牧君が無視して美和とばっかり・・・」
小牧君は口角をあげた。
「それってやきもち？」
私の顔が一気に赤くなる。
何とか落ち着かせようと冷めかけたコーヒーに手を伸ばそうとするとその手を小牧君に再び握られた。
その目はさっきの意地悪な目ではなく初めて告白した時と同じ目だった。

「俺はずっと忘れられなかった。好きで好きで堪らなかった気持ちは今も同じだよ。杏奈は？もう俺の事嫌い？」