紅い記憶と廻る時



また夢を見た。

今朝見たのと似てる場所―――だけど、銃の音も雄々しい叫び声も聞こえない。

戦場でもないみたいだ。

手ぬぐいを頭に巻いた人達が、鍬を持って地面を耕したり、その近くの場所からラッキョウや大根を引き抜いてる。

これは―――畑か?


「××様!」


誰を呼んでいるのかは分からなかったが、可愛らしい女性の声が聞こえて、僕は反射的に振り返った。

僕より背が低いのと、包み髪で顔がよく見えないけど、華奢な感じの綺麗な女性だった。

籠いっぱいの野菜を持って、畑を突っ切って走って来る。

僕を呼んだのか?


「今年も新鮮なお野菜が採れました!今日は××様のお友達もお誘いして、お鍋にしましょう!」

「……ああ、そうだな」


顔の下半分しか見えないけど、太陽のような眩しく純粋なその笑顔は、なんだか見ていて心が落ち着いた。

あれ……この人は……

思い出そうとした途端、また視界が歪み始めて―――

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