君と春を
3月。
桜の蕾が膨らみはじめた卒業間際。
とうとう優也に進学先が別々だとばれた。
茉莉と離れていた隙をつき、強引に誰もいない準備室に引き摺り込まれる。
「…なんで変えた?」
私を壁に追い詰めそう話す瞳は冷たい。
恐怖心を更に煽られるようだった。
「…なんで?
優也がしたこと考えたら当然でしょ?
ストーカーだよ?離れたいと思って当然でしょ!?」
身体が震えそうなのを必死に堪え、叫ぶように訴える。
「……ストーカー?俺が?
こんなに好きなのに?」
一瞬見せた苦しい表情にハッとする。
ストーカーと言われることが納得いかないような、ありえないという表情。
……優也も苦しい想いを抱えてる…?
でもすぐにいつもの笑顔に戻って私を見る。
「言いたいことはわかったよ。
でも美月はいつでもどこに行っても俺だけのものだから。……だから、さ。」
強引に腕を引かれ、気づいた時には唇が優也のそれで塞がれていた。
一瞬の、押し付けるようなキス。
動くことさえできずにいる私に当たり前のように「好きだよ」と言葉を落とし、優也は帰って行った。
優也のキスは……少し震えていた。