君と春を
風呂から上がり、リビングに行くと美月はソファに座って本を読んでいた。
部屋着姿で出会った頃よりだいぶ伸びた髪をまとめ上げている姿は一日の中で最も無防備で、同時に最も俺が好きな姿だ。
ミネラルウォーターのボトルを持ち、隣に座ると彼女は慣れた仕草で俺の肩に頭を預ける。
「…それは何語?」
日本語でも英語でもフランス語でもないその文字を目で追い、美月にたずねる。
「ドイツ語ですよ。読みますか?」
「…美月が訳してくれたらね。」
同じ会話を何度もしてきた。
目線を落とし、本を読む姿も…可愛い。
でも今は………
手を伸ばし、本を優しく閉じてテーブルに置く。
「?」
怪訝な顔で俺を見つめる瞳は……
出会った頃の冷たさがもうすっかり消えている。そうしてあげることができた自分を褒めてやりたいくらいだ。
そしてご褒美に……
「どうしたんですか……っ!」
この唇を貰おう。
深く、濃く、絡み取るように貰おう。
世界で一番愛しい唇を。