君と春を



この会社では高い役職には個室が与えられる。専務という立場も然り。

その部屋にあるのは専務のデスクと秘書用のデスク、書棚に来客用の応接セット。

外出に同行することもあるし一日ここでデスクワークの時もある。

つまり、仕事中は必要とあればほとんどの時間を一緒に過ごすのだ。

「今後の業務の進め方だけど、僕のやり方について来られなければクビだからしっかりやってね。」

満面の営業スマイル。

「…はい。」

午前中は結局『僕のやり方』について細かく説明を受け、午後から彼の本格的な業務とそれに伴う私の業務が始まった。

私の仕事はほぼ雑務。

彼に来る仕事メールを仕分けたり、スケジュール調整をしたりが主。

今までと何ら変わらない…はずが、

「冬瀬さん、メールチェックしたら君で判断できるものは進めて?

最初のうちは僕が教えるから後は君の判断でね。」

この一言で一気に量が増えた。

「私が…ですか?」

「そう。僕は秘書を雑務係りとは思ってないよ。

君は僕の意思を汲んで、君の判断で動いて。欲しいのは雑務係りじゃなくて右腕。

何でも出来るんだろ?」

ニヤリと笑いながらやんわりと挑戦状を渡してきた。


……高野さんのバカ。



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