さちこのどんぐり

「もう一度、コウタくんの分を見つけなきゃ」

そろそろ日が沈み、暗くなってからの「どんぐり」探しは大変なので、
さちこは急いで再び公園を探し回りました。

すると
さっきのより大きくて、色の濃い「どんぐり」が見つかりました。

「コウタくん、いっぱい笑ってくれるにゃ」

そう考えて、さちこがコウタくんを訪ねたときです。

その日は朝から雪がちらつく寒い日でした。

夕方になって外は、かなり寒いはず

なのにコウタくんは、やっぱりベランダに座ってました。

「コウタくん!おっきい『どんぐり』見つけたにゃ!」

さちこはコウタくんに駆け寄ります。

でも
コウタくんは俯いたまま…



「コウタくん!コウタくん!」


「なんだ!ベランダに野良猫が来てんのか!うるさいな!」

部屋のなかから怖そうな男の声が聞こえます

「コウタくん!ほら!また笑ってくれるかにゃ」

「…………」

さちこが
黙って俯いたままのコウタくんに近づいて、その体に触れたときでした。





「コウタくん…

体がとっても冷たいのにゃ…」




さちこは
すごく悲しくなりました。


その日から、さちこは
コウタくんには会っていません。


< 154 / 163 >

この作品をシェア

pagetop