さちこのどんぐり

さちこの魂は、
まだ、その町にいました。
心残りがあったからです。




赤い看板を曲がって、
坂を少し登った
イチ、ニィ、三番目の部屋

あの日、せっかく立派な「どんぐり」を見つけたのに
途中で何かとぶつかって落としちゃったにゃ。
でも見つけたのにゃ。


いつもの部屋から、
あの女の子が出てきました。


あれ?なんだか悲しそうだにゃ。

女の子は足元のとても大きな立派な「どんぐり」を見つけて、それを拾いあげます。




「さちこ…?」


あれ?あれ?どうしてかにゃ…
泣いてるにゃ。




でも、

しばらくしてニッコリ微笑んで、




「ありがと…さちこ」





さちこの魂は
天に昇ります。
心残りがなくなったから…






ほら…

やっぱり笑ってくれたのにゃ


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