さちこのどんぐり
◆オムライスより

~なんで・・・そんな告白?

都内から私鉄で30分くらいのとある町

同じ高校に通う2年生の浩二と結衣は
お互い青っぽいブレザータイプの制服のまま、
日も沈んで、肌寒く感じる歩道橋の上にいた。

幼なじみだった2人は仲良く、寄り添って、
近くのコンビニで買ったカップ入りのアイスクリームを食べながら
下を通る車や人を眺めていた。

クリスマスにはまだ1か月以上あったが、街はイルミネーションが灯り
日が沈んで暗くなった商店が立ち並ぶ通りをキラキラと彩り、2人はそれを眺めるためにそこにいたのだ。

浩二は短めの頭髪に黒目がちな目が少し犬っぽい。

一方、結衣は茶色いウェーブがかった髪に大きな目で、こっちはネコっぽかった。

「きれい…」結衣は、その美しい光景をなんとか写真に収めたいとスマホをいじっていた。しかし夜景というものは、なかなか思うように撮れない。
やがて、スマホをカバンにしまった結衣が視線を歩道橋の上に移すと小さな白いネコが目に入った。

「あ!ネコがいるよ!かわいい」

結衣はその歩道橋の上で見つけた一匹の白いノラネコに歓声をあげた。

そのネコは2人のほうへ近寄ってきた。浩二がしゃがんで、そのネコを覗き込んだ
そして、

「ケガとかはしてないみたいやな」

結衣もしゃがみこんで、ネコを見ながら、

「飼われていたネコなのかな?」

ノラネコの割には人に慣れている。
二人が近寄っても逃げる素振りはなかった。

しばらくして、そのネコから離れ、歩道橋を渡る階段の降り口あたりで

「さっきのネコかわいかったね。私ネコ大好き」
結衣がそう言うと

急に足を止めて浩二が真面目な顔で彼女に言った。

「俺はオムライスが大好きだ。
特に駅前の『キッチン浜』で食べられる…
ケチャップの具合といい、タマゴの焼き加減といい、
中のチキンライスのパラパラ感といい…
俺のなかで究極のオムライスがそれなんやけど…

そんなオムライスより、お前が…結衣が大好きだ」

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