さちこのどんぐり

東京から転勤となった彼は、当時、神戸支店所属だった。

もちろん、そのころは肩書きもなく、
神戸の隣の明石市で一人暮らしをしながら
JR大久保駅から通勤していた。

8:30始業の会社に行くのに7:40くらいの電車に乗って。

ところが、その当時
週に2日ほどだったが、10時くらいまでに舞子駅に着けば良い時期があった。
そんな日は9:30くらいの電車で十分間に合う。


その理由は
当時、担当していた大口契約者が下校中の中学生を自動車事故で死なせてしまい、
その遺族との交渉のため
朝一で直接、被害者宅を訪問していたからだった。

たしか、父親は登山家だったと記憶している。

気が重い仕事だったが、朝ゆっくりできるし電車は空いてて
大森にとっては、とても快適だった。
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