彼岸の杜
滲む視界で目の前にいる人たちを力いっぱい睨み付ける。腹立つし悲しいし悔しい!!今まで出会ってきてあたしはあんなに優しい人を知らない。あれだけ慈愛に満ちた人を知らない。あんなに、他者を思える人を知らない。
そんな茜を見た目が違うからって偏見の目で見て自分で確かめずに拒絶して…しっかり自分の目で見れば茜を厭うところなんてないのに。どうしてそのことに気づこうとしないの。
ボロボロと耐え切れなくなった涙が落ちる。今日だけで一生分の涙を流したんじゃないかって思うぐらいだ。
ふわりと後ろから優しく抱きしめられる。それが誰かなんて考えるまでもない。ここにいる人たちの中であたしと同じ思いを抱えているのは1人だけだ。
「ありがとう、朱里さん…」
もう十分だよ、と言われてまるで茜にそうされた時と同じようにそっと抱きしめてくれる。こんなときまで茜と似ているんだなと考えると切なくてたまらなかった。
2人は一緒になるべき人だったのに…時代のせいなの?それともこの村だったから?こんな終わりを、お別れをする必要なんてなかったのに。そうならざるを得なかったことがやるせない。