強引社長の甘い罠
 私は微笑んだ。

「祥吾が運転しているのを見てるのって好き」

 祥吾に見惚れていたことが知られてしまったのは少し恥ずかしいけれど、隠すつもりはなかった。私自身も彼に対して素直になったのかもしれない。昔のように……。

 再び祥吾が私を見た。やっぱり彼は笑っている。目元はサングラスで隠れているし、今は白い歯も見えないけれど、唇が優しい弧を描いている。

「今日はやけに素直だな」

 そういう祥吾の声も弾んでいた。再び前を向いて車を走らせる彼には見えていないけれど、私はそっと笑った。

「音楽をかけてもいい?」

「ああ、いいよ」

 慣れないカーナビの操作にもたついていると、祥吾が手を伸ばして操作してくれた。曲目が表示されている画面には英語のタイトルばかりが並んでいる。きっと祥吾がアメリカにいたときによく聴いていた曲なのだろう。
 どういった曲かさっぱり分からない私は、最初に表示された画面の中から適当なものを選んだ。すぐに車内に流れ始めた曲は、女性シンガーのアップテンポな曲で、私はそれがとても気に入った。
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