強引社長の甘い罠
テラスの一番先まで連れて行かれた私は思わず息を飲んでしまった。部屋から見ているだけでは分からなかったけれど、まるで海の真ん中に立っているような錯覚を起こした。
張り出たテラスの先からは、どこまでも続く海しか見えない。遠く水平線の向こうに、燃える夕日が大きく揺らめいて海に吸い込まれようとしている。海も空も全てを朱に染めているその様に、私は柄にもなく感動せずにはいられなかった。景色を見て涙が零れそうになったのはこれが初めて。
ガラス製の手すりに掴まり、言葉もなく、ただじっと落日の様子を見守る。そんな私を背後から囲むように、祥吾も手すりに両手をかけた。
「唯?」
私の顔を覗き込む彼の声は少し不安そうだった。
この部屋に入って私がまだ一言も話していないことに今気がついた。祥吾はそれで心配になったのかもしれない。私の反応をどう受け止めていいか、わからなくて。
「祥吾……」
やっとの思いで祥吾の名前を呟いた。どうしてだか分からないけれど、一言でも声を発したら泣き出してしまいそうな気がしていた。だから夕日を見つめたまま言った。今、振り向くなんて、できない。
張り出たテラスの先からは、どこまでも続く海しか見えない。遠く水平線の向こうに、燃える夕日が大きく揺らめいて海に吸い込まれようとしている。海も空も全てを朱に染めているその様に、私は柄にもなく感動せずにはいられなかった。景色を見て涙が零れそうになったのはこれが初めて。
ガラス製の手すりに掴まり、言葉もなく、ただじっと落日の様子を見守る。そんな私を背後から囲むように、祥吾も手すりに両手をかけた。
「唯?」
私の顔を覗き込む彼の声は少し不安そうだった。
この部屋に入って私がまだ一言も話していないことに今気がついた。祥吾はそれで心配になったのかもしれない。私の反応をどう受け止めていいか、わからなくて。
「祥吾……」
やっとの思いで祥吾の名前を呟いた。どうしてだか分からないけれど、一言でも声を発したら泣き出してしまいそうな気がしていた。だから夕日を見つめたまま言った。今、振り向くなんて、できない。