強引社長の甘い罠
 言いながらも私の頬はますます熱を上げていく。これではあまりに説得力がなさすぎる。私は慌てて彼に背を向けた。うまく切り返すこともできないこんな自分が子供っぽいと分かっていても、どうしようもなかった。

 だけど祥吾はやっぱり大人だ。最後にはちゃんと、自分のせいでこうなっているのだと私に知らしめてくれる。意地っ張りな私が安心して彼に甘えられるような場所を作ってくれる。

「それは残念……。俺の方はいつだって君に誘われているというのに……」

 背を向けてしまった私を背後からそっと抱き寄せると、肩に唇を寄せて囁いた。すぐに軽く吸い上げられて、私はピクリと体を震わせた。昨夜、露天風呂で付けられたところとは反対側の肩。彼の腕の中でそっと自分の体を見下ろせば、胸元にも点々と紅い印がついている。それより下は……恥ずかしくて確認できない。

「しょ、祥吾……」

 無駄なことだと分かっていても僅かに抵抗を試みる。だけどやっぱりそんなことは意味もなく、私は結局、朝から声を枯らす羽目になってしまった。
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