強引社長の甘い罠
「今日中には」

「わかった。出来たら教えて」

「うん」

 聡は椅子を隣の席に戻すと自分のデスクへ戻っていった。私はパソコンに向かい、今しがた頼まれた仕事に取り掛かった。

 二時間後、ページを仕上げて試験用サイトで確認できるようにした後、聡に内線して終わったことを報告すると席を立った。
 午後から一度も休憩をしていなかったので、エレベーターホール横の自販機へと向かう。そこにはちょうど及川さんがいた。まだ彼女に祥吾のことを話していなかった私は、飲みに行けるか聞いてみようと思った。

「あ、終わったの?」

 私がオートオークションの追加ページを作成していたことを知っている及川さんが私に気づいて声をかけてくれた。

「はい。今のデザインに合わせて作るだけですし」

「まあ、そうよね」

 色褪せたグリーンのソファに座って紙パックのアイスティーを飲む及川さんが頷く。私は紙コップの自販機の方に硬貨を投入すると、アイスコーヒーのブラックのボタンを押した。間もなく出来上がりの合図が鳴ったので、アイスコーヒーを取り出すと及川さんの隣に腰を降ろす。早速切り出した。

「及川さん、今週の夜ってどこか空いてますか?」

「うん? 今日か明日なら空いてるけど、どうしたの? 飲みにでも行きたくなった?」

「そうなんです。よかったらまたいつもみたいに三人で行きませんか」
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