強引社長の甘い罠
お昼過ぎ、私が出掛ける準備をしてリビングを出て行こうとすると、浜本さんに初めて話しかけられた。
「七海様、どちらへ行かれるのです?」
肩越しに振り返って彼女を見る。彼女の声には私の外出を咎めるような響きが混じっていた。無表情な彼女だが、私にあまり出掛けて欲しくないらしいことはすぐにわかる。
「イトコとランチの約束をしたんです。会社の近くのカフェですし、すぐ戻りますよ」
無理だろうとわかってはいたけれど、私は一人で出掛けるつもりであることを意思表示する。彼女の返事を待たずにロビーへ出ようとするとまたすぐに呼び止められた。
「お待ちください。まずはこちらへ」
そう言った浜本さんは、私をロビーに置いてあった椅子に座らせると少し離れ、すぐにどこかへ電話をかけた。なるほど、そういうこと。当然よね。私は思い切り不満そうな顔をして、足を組んだ。彼女が祥吾に連絡を取ることくらい、私だってちゃんと予想していた。
「浜本です。七海様が外出されます。場所は……ええ、もちろんです。……はい……はい大丈夫です。……承知しております。……はい、ではまた後ほど」
電話の相手に手短に用件を伝えた彼女が通話を切った。そしてすぐに、にこりともせずに言った。
「タクシーを手配させていただきます」
「七海様、どちらへ行かれるのです?」
肩越しに振り返って彼女を見る。彼女の声には私の外出を咎めるような響きが混じっていた。無表情な彼女だが、私にあまり出掛けて欲しくないらしいことはすぐにわかる。
「イトコとランチの約束をしたんです。会社の近くのカフェですし、すぐ戻りますよ」
無理だろうとわかってはいたけれど、私は一人で出掛けるつもりであることを意思表示する。彼女の返事を待たずにロビーへ出ようとするとまたすぐに呼び止められた。
「お待ちください。まずはこちらへ」
そう言った浜本さんは、私をロビーに置いてあった椅子に座らせると少し離れ、すぐにどこかへ電話をかけた。なるほど、そういうこと。当然よね。私は思い切り不満そうな顔をして、足を組んだ。彼女が祥吾に連絡を取ることくらい、私だってちゃんと予想していた。
「浜本です。七海様が外出されます。場所は……ええ、もちろんです。……はい……はい大丈夫です。……承知しております。……はい、ではまた後ほど」
電話の相手に手短に用件を伝えた彼女が通話を切った。そしてすぐに、にこりともせずに言った。
「タクシーを手配させていただきます」