強引社長の甘い罠
「ほんと、どうしちゃったんだろうね、私。じゃあ今度日本に帰ってきたら、またこの前のレストランに連れていってくれる?」
「ちゃっかりしてるな」
そう言った良平は「そんなに頻繁には連れて行けないぞ」と笑った。
ここ最近食欲もなく、今日久しぶりにちゃんと食べた朝食も遅い時間だったというのに、私はそばを全て平らげた。それくらい美味しかったし、冷たい麺類というのもよかったのかもしれない。
それに、思うことは色々あるけれど、今朝から私は少しずつ自分を取り戻し始めている。なんだかんだ言いながら、ホテルのテラスから見える景色を楽しむ余裕もあったし、祥吾の事情もほんの少しだけど知ることができた。良平に会って楽しい時間も過ごせた。彼がまたアメリカに戻ってしまうのは寂しいけれど、それが彼の仕事なのだから仕方がない。
私たちが店を出ると、やはり外にはもう一人の男性のボディーガードが立っていた。良平と二人で肩を並べて駅に向かって歩き始めると、来たときと同じように彼らも私の後をついてくる。いくら祥吾のアメリカ生活が長いといっても、誰の目にもこれはやりすぎだろう。
私はふと、ファミレスで彼に防犯対策を怠っていると指摘されたことを思い出した。あの時も祥吾は過剰反応していたように思う。もっとも、あの頃の彼は私を愛してくれていて、私の身を心配してのことだったのだけれど。こうして私を遠ざけるためにボディーガードを雇われているのとでは、意味が違う。ああ、ダメ。考えるとまた泣けてくる。私は滲みかけた涙を払うために何度も瞬きを繰り返した。
「ちゃっかりしてるな」
そう言った良平は「そんなに頻繁には連れて行けないぞ」と笑った。
ここ最近食欲もなく、今日久しぶりにちゃんと食べた朝食も遅い時間だったというのに、私はそばを全て平らげた。それくらい美味しかったし、冷たい麺類というのもよかったのかもしれない。
それに、思うことは色々あるけれど、今朝から私は少しずつ自分を取り戻し始めている。なんだかんだ言いながら、ホテルのテラスから見える景色を楽しむ余裕もあったし、祥吾の事情もほんの少しだけど知ることができた。良平に会って楽しい時間も過ごせた。彼がまたアメリカに戻ってしまうのは寂しいけれど、それが彼の仕事なのだから仕方がない。
私たちが店を出ると、やはり外にはもう一人の男性のボディーガードが立っていた。良平と二人で肩を並べて駅に向かって歩き始めると、来たときと同じように彼らも私の後をついてくる。いくら祥吾のアメリカ生活が長いといっても、誰の目にもこれはやりすぎだろう。
私はふと、ファミレスで彼に防犯対策を怠っていると指摘されたことを思い出した。あの時も祥吾は過剰反応していたように思う。もっとも、あの頃の彼は私を愛してくれていて、私の身を心配してのことだったのだけれど。こうして私を遠ざけるためにボディーガードを雇われているのとでは、意味が違う。ああ、ダメ。考えるとまた泣けてくる。私は滲みかけた涙を払うために何度も瞬きを繰り返した。