強引社長の甘い罠
「どういうつもりだ?」
祥吾が今度はメイソンさんに向かって言った。言葉だけで物が切れそうなくらい鋭い口調だ。
「唯には近づくなと言っておいたはずだ」
メイソンさんが肩をすくめる。それを見た祥吾は急に彼に飛び掛ったかと思うと、彼のTシャツの胸倉を掴みあげた。あっという間だった。
「どういうつもりだと聞いているんだ!」
辺りは騒然としていた。祥吾が無茶な横断をしたせいで車が一台、中央分離帯に設置されていたガードレールにぶつかったらしく、ドライバーが悪態をついている。私たちの周りにはそこに見えない壁があるかのように、人垣が出来ていて、道行く人が成り行きを見守っていた。私がさっきまでいたカフェにいる人たちも、チラチラとこちらを観察している。
「桐原様、落ち着いてください」
私を見張っていた男性のボディーガードが祥吾に声をかけた。祥吾はメイソンさんから手を離さずに、今度は彼を睨みつけて怒鳴った。
「溝口、お前は何をしていた! 唯を守るように言っておいたはずだ! どうしてコイツが唯に声を掛けるのを阻止しなかった!」
「桐原様、そのことなのですが……」
「やめて!」
私はメイソンさんを掴み上げたままの祥吾の背中に飛びついた。彼の背中に顔を埋めて懇願する。
「やめて、祥吾。どうしてこんなことをするの? 私はただ、メイソンさんが時計を落としたから拾っただけよ。私が彼に声を掛けて、そしたら彼はお礼にコーヒーを奢ってくれた。それだけよ」
祥吾が今度はメイソンさんに向かって言った。言葉だけで物が切れそうなくらい鋭い口調だ。
「唯には近づくなと言っておいたはずだ」
メイソンさんが肩をすくめる。それを見た祥吾は急に彼に飛び掛ったかと思うと、彼のTシャツの胸倉を掴みあげた。あっという間だった。
「どういうつもりだと聞いているんだ!」
辺りは騒然としていた。祥吾が無茶な横断をしたせいで車が一台、中央分離帯に設置されていたガードレールにぶつかったらしく、ドライバーが悪態をついている。私たちの周りにはそこに見えない壁があるかのように、人垣が出来ていて、道行く人が成り行きを見守っていた。私がさっきまでいたカフェにいる人たちも、チラチラとこちらを観察している。
「桐原様、落ち着いてください」
私を見張っていた男性のボディーガードが祥吾に声をかけた。祥吾はメイソンさんから手を離さずに、今度は彼を睨みつけて怒鳴った。
「溝口、お前は何をしていた! 唯を守るように言っておいたはずだ! どうしてコイツが唯に声を掛けるのを阻止しなかった!」
「桐原様、そのことなのですが……」
「やめて!」
私はメイソンさんを掴み上げたままの祥吾の背中に飛びついた。彼の背中に顔を埋めて懇願する。
「やめて、祥吾。どうしてこんなことをするの? 私はただ、メイソンさんが時計を落としたから拾っただけよ。私が彼に声を掛けて、そしたら彼はお礼にコーヒーを奢ってくれた。それだけよ」