強引社長の甘い罠
私は少しためらった後で、祥吾の名前は伏せて事の経緯を説明した。私が学生時代の恋を引きずっていたこと、聡とはお互いにそれを承知の上で付き合い始めたこと。そして最近、昔の恋人と再会したことを全て話した。ただ、キスしたことは黙っていた。そのことについては、私自身も整理しきれていなかったから。
話しながら随分むしのいい話だと自分でも思った。例え聡がどうであれ、忘れられない人がいながら聡と付き合っていたのは事実で、時を経てその恋人が自分の目の前に現れたことが原因で、私は聡と別れたのだ。聡を利用したと言われても返す言葉がない。
「私って、ずるいよね……」
私は肩を落として項垂れた。
すると、右隣からは意外にも明るい声が返ってきた。
「え~、そんなことないですよ。だって、忘れられないんだからしょうがないですよね。それに、私だってフラれて落ち込んでるときに優しくされたらコロッといっちゃいます。私だったら七海さんみたいに二年も待たず落ちちゃいますね。しかもその相手が井上さんみたいなイケメンだったら落ちない方がおかしいですよ。むしろ昔の恋人に再会したからって、何で馬鹿正直に別れちゃったのかなあ、って思います。別れる必要なんてなかったんじゃないですか?」
皆川さんは私を見ながらそう言った後、及川さんを見て「そう思いますよね?」と同意を求めた。
「そうよねぇ。七海さんの話だと、その学生時代の恋人は七海さんとヨリを戻すつもりはないみたいだし、七海さんも割り切って今までどおりでいればよかったのに、とは思うわね。井上くんだってそんなこと分かってて七海さんと付き合っていたんでしょ? 彼、結婚も考えてたみたいなのによく別れ話に承諾したわよね。何だかかわいそうになってきちゃった」
及川さんと皆川さんが二人で頷いている。聡にしてみれば同情などされたくないだろう。
だけど、彼女たちが彼に同情する理由は私の予想を外れていた。
話しながら随分むしのいい話だと自分でも思った。例え聡がどうであれ、忘れられない人がいながら聡と付き合っていたのは事実で、時を経てその恋人が自分の目の前に現れたことが原因で、私は聡と別れたのだ。聡を利用したと言われても返す言葉がない。
「私って、ずるいよね……」
私は肩を落として項垂れた。
すると、右隣からは意外にも明るい声が返ってきた。
「え~、そんなことないですよ。だって、忘れられないんだからしょうがないですよね。それに、私だってフラれて落ち込んでるときに優しくされたらコロッといっちゃいます。私だったら七海さんみたいに二年も待たず落ちちゃいますね。しかもその相手が井上さんみたいなイケメンだったら落ちない方がおかしいですよ。むしろ昔の恋人に再会したからって、何で馬鹿正直に別れちゃったのかなあ、って思います。別れる必要なんてなかったんじゃないですか?」
皆川さんは私を見ながらそう言った後、及川さんを見て「そう思いますよね?」と同意を求めた。
「そうよねぇ。七海さんの話だと、その学生時代の恋人は七海さんとヨリを戻すつもりはないみたいだし、七海さんも割り切って今までどおりでいればよかったのに、とは思うわね。井上くんだってそんなこと分かってて七海さんと付き合っていたんでしょ? 彼、結婚も考えてたみたいなのによく別れ話に承諾したわよね。何だかかわいそうになってきちゃった」
及川さんと皆川さんが二人で頷いている。聡にしてみれば同情などされたくないだろう。
だけど、彼女たちが彼に同情する理由は私の予想を外れていた。