色恋 〜Colorful Loves〜
「ーーー見に行きましょう」



誠一郎さまが、私の手をぎゅっと握りしめて囁いた。


私はくすりと笑みを洩らし、



「まぁ、すてきですわ。そうできればすばらしいですわね」



と返した。


たわいもない言葉だと思った。


私がここから出られないことは、誠一郎さまも分かっているはず。



花街に足を踏み入れた女は、二十八になって年季が明けるか、あるいは客の男に身請けされて買い上げられるまで、外に出ることは許されないのだ。



夜桜と月を見に行くことなど、遊女にとっては夢のまた夢だった。




………それなのに。



「清月さま、俺は本気ですよ。

あなたと共に、桜を見に行きたいのです」



誠一郎さまはこれ以上ないほどに真剣な眼差しで私を見つめていた。




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