色恋 〜Colorful Loves〜
「………な、にを、おっしゃるのですか、誠一郎さま。

そんなこと、できるわけが………」



声が詰まって、うまく話せない。


私は顔を背け、誠一郎さまにつかまれた手を離そうともがいたけれど、誠一郎さまは離してはくれなかった。



「………身請けというものが、あると聞いています」



誠一郎さまが呟いた。


私は首を横に振る。



「私は太夫ですもの。私を身請けするには、何百両あっても足りないくらいですわ。

いくら音羽屋の跡取りであられる誠一郎さまでも、それほどのお金は自由にはならないでしょう?」



「それは………」



誠一郎さまは苦い表情で眉をしかめた。


しばらく俯いて考え込むようにしていた誠一郎さまが、ふいに顔を上げた。



驚くほどに強い瞳が、まっすぐに私を見つめている。





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