不都合と好都合
工藤ひろ子
工藤ひろ子は年齢の割に大人になれない奴であった。
「今度、お宅の前の新築に越して来ました、橋川と申します。」
ひろ子は今、自宅の玄関で訪問客を受けていた。
その客はひろ子と同年代のように見受けられる女であった。
「これはほんのご挨拶のしるしです。」
女は小さな包みをひろ子に差し出しながら言った。
「これはこれは、お心遣い、どうもありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いします。」
ひろ子は満面の笑みを浮かべてそれを受け取った。
「それではこれで失礼します。」
「ちょっと待って!」
おいとましようとした客人の動きをひろ子は大声をあげて止めた。
「これからご近所同士になるんですもの。ちょっと上がってお話しでもしません?何もない所ですけど。」
ひろ子は満面の笑みのまま客人を誘った。
客人は少し迷う素振りを見せたが
「せっかくですが、まだ挨拶回りの途中ですので。」
と、断わり
「また落ち着いたら、改めてお邪魔させていただきますので。」
と、付け足した。
「いいじゃん!」
ひろ子はまた大声を出した。もう満面の笑みは浮かべていない。
「今度、お宅の前の新築に越して来ました、橋川と申します。」
ひろ子は今、自宅の玄関で訪問客を受けていた。
その客はひろ子と同年代のように見受けられる女であった。
「これはほんのご挨拶のしるしです。」
女は小さな包みをひろ子に差し出しながら言った。
「これはこれは、お心遣い、どうもありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いします。」
ひろ子は満面の笑みを浮かべてそれを受け取った。
「それではこれで失礼します。」
「ちょっと待って!」
おいとましようとした客人の動きをひろ子は大声をあげて止めた。
「これからご近所同士になるんですもの。ちょっと上がってお話しでもしません?何もない所ですけど。」
ひろ子は満面の笑みのまま客人を誘った。
客人は少し迷う素振りを見せたが
「せっかくですが、まだ挨拶回りの途中ですので。」
と、断わり
「また落ち着いたら、改めてお邪魔させていただきますので。」
と、付け足した。
「いいじゃん!」
ひろ子はまた大声を出した。もう満面の笑みは浮かべていない。