不都合と好都合
「それはお前が決める事じゃないだろ!」
雅夫は思わず立ち上がっていた。
「家見せする時は俺が言う。」
飲み終えた缶コーヒーをゴミ箱に捨てて雅夫はその場を去って行った。
西田雪は落ち着いて缶コーヒーを飲んでいた。

仕事を終えて駐車場へむかった雅夫は同僚の木崎と会った。
「奥さんには何もさせないようにいろいろ買って行くからな。」
木崎は雅夫の顔を見ると開口一番そう言った。
雅夫は言われた意味を解釈するのに時間がかかり
「ひょっとして家に来る事?」
と聞いて、
「どうせ西田が言い出しっぺなんだろ?本気にするな!あいつが勝手に言ってるだけだ。」
「やっぱりな。西田の話しだから皆、話し半分なんだよ。だけどおめでとう。」
木崎は親しみを込めて雅夫の肩を叩いた。
「ありがとう。そのうちに家に招待するよ。」
雅夫もやっと笑顔を見せて木崎を見た。

木崎と別れて自分の車に乗り込んだ雅夫は改めて西田雪の勝手な振る舞いを思い出して腹わたが煮えくり返るようだった。
雅夫は他人からいろいろ指図されるとますます我を通そうとするたちであった。何が有っても家に招待なんかするもんかと思いながら車をスタートさせたのであった。
< 7 / 19 >

この作品をシェア

pagetop