レイアップ
「ねえ、もしかしてシュウイチが今日ここに来たのってミウに何かいわれたからじゃない?」
「違うよ」
おれはかんぱつ入れずに返事を返した。一拍の間も置くことなく、逆に怪しいくらいに早く。それが今おれに出来る精一杯の嘘のつき方だった。
「そっか・・・」
ユキの表情からは何も読み取れなかった。ただ、勘の鋭いユキがおれの下手な嘘を信じるとは思えなかった。
多分状況は最悪だ。おれは勝手にそう思っていたけど、ユキにとってはおれのついた嘘なんてどうでもよかったのかもしれない。
「私ね、本当は今日ここに来るつもり無かったんだ。昼間自分から誘っといて返事も聞かずに帰っちゃたし、きっとシュウイチは別の人と花火観るんだろうなって。でもね・・・、」
ユキが全てをいい終る前に、おれの頭の中には一つの仮説が浮かんでいた。なるほどそういうことか。フェイクに引っ掛かかったのはおれだけじゃなかったんだ。おれの仮説はユキの言葉ですぐに証明された。