レイアップ
聞きあきたはずの音が、どうしてこんなに心をかきみだすのだろう。
どこかホッとする様で、なにか、ざわめきたつ様な、不思議な気持ち。
気付かぬうちに抑え込んでいたものが、一気に溢れ出てきそうで怖かった。
黒い煙の様なものが、おれの中をぐるぐる回る。
「クソ、気持ち悪りぃーな」
パシュ、と勢い良くボールがリングをすり抜ける音と同時に、おれは、目をあけた。
「ねえ、いつまでそこで私のパンチラみてんの」
とっさにミウにそういわれ、おれは慌てて立ち上がった。
「うるせぇ、みてねぇよ、バカ」
慌ててそういい返したとき、ミウがスッとボールをおれにパスした。
綺麗なチェストパス。
久しぶりのつぶつぶとしたボールの感触を指先に受け、おれは思わず全身に鳥肌が立った。
「ほら、シュート打ってみてよ」
ミウにそういわれて、おれはじっとリングを見つめた。
なんだか、ずいぶんと長い間このリングから目を反らしていた気がする。
おれは、3Pラインの前に立ち、ボールを頭の上に構えた。左45度からの3P。
おれが最も得意としていたシュートだ。