レイアップ
次の日、おれは寂れた体育会じゃなく、昔よく通っていたスポーツ量販店にいた。
昔といってもほんの一年前までの話だけど、そのほんの一年の間に、まだまだ育ち盛りのおれの足は5ミリほど延びていた。
あんまり顔馴染みの店に行くのは気が進まなかったが、このあたりではこの小さな個人経営のバスケ用品専門店が、一番品揃えも豊富で、値段もリーズナブルだから仕方ない。
おれは、今年のナイキのニューモデルを指差して店のオヤジに声を掛けた。
「これ、おれの足に合うやつある?」
すると店のオヤジは、足元のビッシリと箱が敷き詰められた引き出しから、ナイキのマークのついた箱を一つ取り出してくれた。
「シュウ、お前また足でかくなったのか。もう高校生だろ?そろそろ成長とめないと履く靴なくなっちまうぞ」
どう見てもスポーツをやっていたとは思えない、下っ腹のでた店のオヤジは、ヤスリで削ったようなガラガラ声で笑った。
ボウズに近い短髪の頭は、一年前より白髪が増えた気がする。
なんだか、典型的な昭和の親父みたいだが、おれはこの店のオヤジがなんとなく好きだった。