レイアップ
話しにならない。こっちが真剣に話しているのに相変わらずミウはいつものペースだ。真面目なユキなら余計にイライラすることだろう。おれは言葉に詰まりながら、昨日のユキとの会話を思いだしていた。
「ミウは、おれとユキをくっつける為にわざわざ会いにきたのか?」
ミウはアヒルのような口をして、天井を見上げながらいった。
「う~ん。ちょっと違うかな。でもくっつけようとは思ってたかも」
「かも?ならなんでおれにキスなんかしたんだよ!」
思わず声が大きくなってしまった。ミウは少し驚いた顔をしたが、すぐに無邪気な笑顔に戻っていう。
「さてなんででしょう?」
ミウはおれに向かってボールをパスした。いつものように髪を結んでフリースローラインに立つ。
「とりあえず20点。私に勝ったらなんでも教えてあげる」
これ以上の会話は無駄だった。おれは制服のズボンの裾をまくりあげ、ミウの前に立った。夏休みも後半戦だ。このまま負けっぱなしで終わるわけにはいかない。今日こそ正体をあばいてやる。自分が負けるなんてみじんも思っていないミウの顔は、おれを心底燃えさせた。