レイアップ
古びた体育館にバッシュのスキール音が響く。所々、切れたリングのネットにボールが通り抜けていく。
勝負はこの夏初めての接戦だった。お互い一歩も退かず、代る代るシュートを決めていく。
丸一年のブランクはすっかり埋まっていた。シュートを放った瞬間に、ボールがフープに入る感覚が右手に伝わる。何故だかは分からないいけど、この感覚だけは的中率100%なんだ。この時だけは一秒先の未来が予知できる。それは超能力でも天賦の才能でもなく、何千、何万とシュートを打てば誰でも会得できる感覚だ。
おれは、最後の20点目を危なげなくリングに沈めた。
「やるじゃん。次私が外せばシュウの勝ちだね」
追い詰められているのに、ミウの顔にはまだ余裕の笑みが浮かんでいる。
「絶対に止める」
おれは腰を低く落とし、ミウの一挙一動に集中する。ミウは指先でボールをクルクルと回しながら攻め込むタイミングを見計らっていた。
「根性無しに私は止められないよ」
「エ?」
口から思わず声が漏れた時、はりつめていた集中力が途端に切れた。ミウはその隙を見逃さず、ドリブルを一つ突いて大きく後ろに跳んだ。