レイアップ
「なあ、明日もここでバスケしない?」
女の子をデートに誘ってるみたいで照れくさい。
だけど、もう少しだけミウとバスケをしたい。そう思ったんだ。
昔を思い出して胸が痛むのは、まだ自分が、足の爪先まで灰色に燃え尽きてしまったわけではないからだ。
火は消えてない。
今まで無くしていたはずの熱が、身体中から沸々と蘇ってくる。
「じゃあ、明日も今日と同じ時間に待ってるね」
ミウは、満面の笑みで笑ってくれた。その無邪気な笑顔はすごく眩しくて、おれの中の荒んだ部分を全て消してくれる気がした。
ホントに変・・・いや、不思議な女。
異常なまでにバスケが上手くて、その癖ギャルで、マイペース。だけど、一緒にいてちっとも違和感がない。いや、むしろそれが違和感なのかもしれない。
生きてる人間なら誰しもが持っている心の壁。
おれたちは、いつでもその壁を薄くしたり、厚くしたりしながら、人との距離をとっている。
だが、ミウには全くそれがない。
日が昇る。雲が流れる。風が吹く。
昨日、会ったばかりの他人同士なのに、そこにいて当たり前の様に感じてしまう。
なんだかよく分からないけど、悪い気はしなかった。