レイアップ
「じゃあな」
おれは軽く右手を自分の頭の高さまで上げた。
「うん。またね・・・」
橋の真ん中でお互い向かい合う。ユキは、まだ何か話したりなさそうな顔をしていたけど、このまま一緒に部活見学をるわけにもいかないだろう。
「じゃあな」
おれはもう一度、ユキに挨拶をして背を向けた。さっき来た道をまたゆっくり歩き始める。その時だった。聞き取れないくらい小さなユキの声がぽつりと聞こえた。
「ねえ、ひとつ聞いていい?」
首だけ後ろを振り向いてユキを見た。そこには、今まで見たことのない照れくさそうなユキの顔があった。いつも透き通るような真っ白な頬が、うっすらと赤みがかかっている。
「なに・・・?」
おれは、まだ顔だけをユキに向けたままポケットに手を入れてユキの言葉を待った。
「今日の夜って、暇?」
頬どころか、完全に顔全体を赤らめながらユキはいった。今度はユキがおれの言葉を待つ番だ。しかし、おれが答える前に、ユキは足元に視線をキョロキョロと走らせなが続けていった。
「久しぶりに一緒に花火観に行かない?」
1年前と同じセリフ。しかし、いってる本人は1年前とはまるで別人だった。