不機嫌な彼のカミナリ注意報2
「拉致られたまま、戻ってこないね」

 気がつくと藤野くんにそう声をかけられていた。私は座ったまま振り向き、苦笑いの笑みを返す。

「良かったら一緒に昼飯、どう?」

「……え」

「もうお昼だよ。あー、腹減った」

 本当だ。壁にかかっている時計を見ると、もう十二時を過ぎている。
 と同時に、『あー、腹減った』というセリフがすべてにおいてスマートな藤野くんに似つかわしくなくて、思わずクスリと笑ってしまった。

「どこで食べるつもりなの?」

「俺がよく行く定食屋。そこであったかい蕎麦でも」

「じゃあ私もそうする」

 他意のない、同僚同士ただ単に一緒に空腹を満たそうという誘いになら、抵抗なんてあるはずがない。
 私は藤野くん行きつけの定食屋さんに同行することにした。

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