不機嫌な彼のカミナリ注意報2
「アポなしでいきなり襲撃かよ」

 挨拶の言葉も述べず、いきなりそんな不躾な言葉をお見舞いすると、そいつは頭だけで振り返って俺を見た。
 ガラステーブルの上に、俺は手にしていた仕事のファイルをバサリと置き、その人物の向かい側の椅子に仕方なく腰をおろす。

「襲撃だなんて、相変わらず口が悪いわね~」

「間違ってないだろうが」

「電話したって、また適当に切られると思ったから」

 そのタイミングで、受付の夏野が気を利かせてコーヒーをふたつ持って来て、俺と訪問客に営業スマイルを振りまく。

 ――― 苛々していて気づくのが遅れた。
 考えてみれば先ほどの江木も今の夏野も、アイツと同期の友達じゃないか。

 俺の今現在の不遜な態度も、今の会話も、見られたし聞かれていたに違いない。

 決して客に見せるものではない態度や言葉使いだったことは明らかだ。

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