ツンデレ専務と恋人協定
私はその場に立ち尽くして、ただ常務だけを見つめていた。

こんな常務を見るのは初めてだけど、今までのどの常務よりも人間らしいと思える。

常務は優しいし、専務ほど言葉使いも悪くないけど、いつもどこか冷めているような冷たさを感じていた。


「…常務」

「栞奈さん、ごめんね」


さっきまで声を荒げていたのが嘘かのような弱々しい常務の声。

私はその声を聞いて、また胸が締め付けられる。

だけど、これは恋とかときめいたからじゃないってわかる。

専務の事で胸が締め付けられるときは呼吸まで苦しくなるような気がしていた。


「常務に大切にするって言われて嬉しかったです」

そう言うと、後ろで扉が閉まる音が聞こえてきて、専務が出て行ってしまったんだと思う。

だけど、話の途中でこの場を去ることは出来なくて私は続きを話出した。


「でも、私は専務が好きで、苦労するって誰に言われても専務を選びます!」

「…そっか」

「はい…アメリカへ行くかはわからないですけど、専務への気持ちは揺らがないと思います」


はっきりと常務には言っておいた方がいいと思う。
それが、唯一私が常務にできることだと思うから。


「栞奈さんなら、アメリカへ行ってもやっていけるな。あのモンスターを、ああまで変えたんだから」

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