夢幻泡影

吉田と一緒に暮らすようになってから

いつも、ぴったりと一緒にいるため

次第に逃げることを諦めた


そんなある日



「瑛!散歩しよう!!」

吉田が言い出した

「ふらふら出回っていいの?」

「夜さ!月見しながら、散歩!いいだろ?」

「ふふふっ!駄々っ子のようね?」


吉田の人柄に警戒心もなくなった

『居心地がいい』と思うようになっていた


長州の中でも、派閥があり
吉田は、中立的な立場にあった

そして、瑛を買ったことで、どちらからも

命を狙われている

瑛を餌に朝廷を味方につける

そんな作戦まであるらしい

「瑛、お前を巻き込んでしまって…
本当にすまない!!」

「聞き飽きたわ!稔が、この先、あたしと
居てくれるんでしょう?」

「もちろん!!瑛!
お前の為なら、この命も落とす価値がある!!」

「稔の為に、あたしの血を使いたい!」


月明かりを頼りに、町外れを歩く


「京を離れよう!どこか山奥で暮らそう!
瑛! 夫婦になってくれないか?」


吉田の目は、とても綺麗に清んでいた

吸い込まれるように


「はい」


瑛は答えた


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