夢幻泡影

次に瑛が目を覚ましたのは、夕日が沈む頃


『外に出たい…』


布団から体を起こした

『天井の人…土方さんを呼びに行かない?
逃げると思っているのか?殺されてもいい… 外に出たい』


瑛がこんなことを思うのも、半年ぶりだった


ふらふらと千鳥足、裸足のまま雪が薄ら積もる庭に降りた


『冷たい… 夢じゃない…
昨日の雪が積もったんだよな?』


瑛は、自分を大切に扱う新選組は夢の中の幻かもと疑っていた


『天井の人…降りてくる』


瑛は雪を丸める

天井の人が降りてくると同時に、投げた


「うげゃ!!」


見事に顔面に当たる


「冷た!!ぷはは!!嬢ちゃんやりよんなぁ!!はははっ!」

『明るい人…』

「嬢ちゃんこっちおいで!?」ふわりと笑う

瑛はまた、雪を丸める

「え?投げたらあかんで?」

くるりと振り返って廊下の角に投げる


「うわっ!!」

土方は見事によけた


「あ!副長!すみません!!」


投げたのは瑛だが、山崎が謝る


「山崎!!雪合戦でもやってんのか?」

「いえ…その…。」


「んあ!お前また裸足で!!こっちこい!」

瑛はまだ雪の中にいたかった

二人に背を向けしゃがむ

土方が瑛のもとへ行く

「ううっ裸足はさみぃ。」

土方は自分の着ていた羽織を瑛にかけた

『あったかい… 』

無表情の瑛が立ち上がって土方を見る


雪で冷えた手で土方の頬に触る


「うひゃ!冷てぇ!!」


『不思議…怖くない…』


瑛は土方の後ろに回り込み、自分にかけられた羽織を精一杯背伸びして土方にかけた
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