夢幻泡影

物音に気づき、吉田は土方の前に立った

圭尚が最後の力で投げた小刀が

吉田の腹に刺さる




「吉田!!お前…何で俺を?」

「瑛が…泣くから…
土方さん…っていつも寝言でさ…」

「稔!!今、治すから!!」

「瑛…約束破っちゃダメ…
それに… もう、助からないだろ?」

「いや!やだぁ!!」

「瑛、自分で選ぶんだ!
桂さんのところへ行くか
新選組に行くか」

「あたし…どうしたらいいの…」

「土方…」


「なんだ?」

「瑛のお腹にお前の子供がいる」

「え?」

「安全なところへ置けるか?
血が狙われないように…
女の子なら、子供も危ない!
なぁ?守れるか?」

「稔!お願い、怪我を治療させて?」

「瑛…体に負担が…子供に良くない…
駄目だ! 助からないから…
土方?答えてくれ?」

「守りたい!」

「私も一緒に守ります!」

「新選組で、瑛を守る!」

「それは駄目よ!あたしの血で余計な
争いが…生まれる!」

「はぁ… はぁ… て… る…」

「稔!!」

「しかた…ないね…
土方…瑛を死んだことにして…
瑛、桂さんのところへ行って
遠くで産みなよ?うぐっ
それから…子供が無事に産まれたら文を
出すといい…はぁ… ごめん…
ついてて…やれ…なくて…はぁ…」

「稔…」

「…いいね…?桂さんに…頼ん…ある…」


「いやぁぁぁあぁぁぁ!!!」



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