聖夜に舞い降りた天使
「わぁーーーっ、やっぱり凄く綺麗っ!!
ね、ルネ」
嬉しそうに話す彼女とは対照的に
僕の胸は落ち着きなく鼓動を速めていた。
(クリスマスイブに出逢った美しい
天使のような彼女と暗い部屋で二人きり……
なんなんだろう、このシチュエーションは……)
「ね、ルネってば……
聞いてる?」
アンジュの声にハッとする。
「あ、ごめん。何?」
「ここに音楽があれば最高だなって思って」
先ほどのアンジュのクリスマスキャロルが耳に蘇る。
「アンジュが歌ったらいい」
少し悪戯っぽく言うと、アンジュはむくれたような顔を見せた。
「だめよ。クリスマスキャロルを聴きながらゆっくりとクリスマスイブを楽しみたいもの」
(むくれた顔も可愛いな……)
「確か僕の部屋にラジオがあったはずだから待ってて」
階段を上って廊下の突き当たりにある自分の部屋へと向かう。
ここの鍵も表の扉同様、年季が入っている。
机とベッドとクローゼットと書棚しかないシンプルな部屋。
机の上の小型の携帯ラジオを手に取るとリビングへ早足で戻った。
別に急ぐ必要などなかったのだけど……
彼女に早くクリスマスキャロルを聴かせたくて
早くその喜ぶ顔が見たくて
足が意思を持って動いていた。
「お待たせ」