聖夜に舞い降りた天使
アンジュはソファにゆったりと背を預けてエッグノッグを飲みながら
うっとりとクリスマスツリーを眺めていた。





「じゃ、かけるよ……」


今日はどのラジオ局でもクリスマスソングしか流れていない。

その中でもクリスマスキャロルのゴスペルが流れている局に合わせて、電源をつけた。





「素敵……」





アンジュはゴスペルの美しいクリスマスキャロルに耳を傾けた。

瞳を閉じ、ラジオから流れるクリスマスキャロルに合わせて口ずさむ。


僕は彼女の隣に座るとそんな彼女を眺めながら冷めてしまったエッグノッグに口をつけた。





（アンジュはなんであんな公園に一人で立っていたんだろう。
しかも極寒の中、スノーブーツも履かずに……

勢いでここに連れて来てしまったけど、よかったのかな。

アンジュの家族は心配していないだろうか……）





そう考えて、少し胸が痛んだ。


家族について考えるときはいつもそうだ。


僕には血の繋がった家族はいない。

孤児院で一緒に育ったみんなや院長さん達は家族のように接してくれたけど、
やはり本当の家族とは違うものだと肌で感じていた。





曲の終わるタイミングを見計らってアンジュに尋ねる。


「アンジュ、ご家族が心配してるよ。家まで送るよ……」





アンジュは少し笑って少し悲しそうな顔で呟いた。


「心配する、家族なんていないの……
私がいてもいなくても……誰も気にする人なんていない……」





そして、僕に固い笑顔を見せて戯けた。


「言ったでしょ？
私は天使なんだから…


今日はクリスマスイブを一緒に過ごす為に
ルネの元に舞い降りて来たの」



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